皆様お久しぶりです。なましいたけです。ブログが崩壊していたため、なかなか記事を更新できませんでした。が、やっと復活しました。また記事を作っていきますので、よろしくお願いします。
復活一発目の今回は、ちょっと変わった記事です。釣りに関する古い言葉を、ボクが自分の人生で検証してみた、というお話。そしてそれを1冊の本にまとめました、というお知らせでもあります。
その言葉は、中国に古くから伝わるとされる、これです。
一時間、幸せになりたいなら、酒を飲みなさい。
三日間、幸せになりたいなら、結婚しなさい。
永遠に幸せでいたいなら、釣りを覚えなさい。
釣りをする人なら、どこかで一度は目にしたことがあるんじゃないでしょうか。誰が言ったのかは、はっきりしません。老子だという人もいますが、たぶん本当のところは分からない。それでも、この言葉は昔から釣り人のあいだで、なんとなく語り継がれてきました。
で、ボクは思ったわけです。これ、本当なんだろうか。
ボクは今年42歳。物心つく前から釣りをしてきて、40歳のときに和歌山の古民家に移住して、今は海のそばに住んでいます。人生の大半を水のそばで過ごしてきました。心が壊れて家から出られなくなった時期もあって、そこから引っ張り出してくれたのも、やっぱり釣りでした。
だとすれば、あの言葉を自分の人生に当てはめて検証するには、そこそこいい立場にいるんじゃないか。そう思って書き始めたのが、今回の本です。
どんな本なのか
タイトルは「永遠に幸せでいたいなら、釣りを覚えなさい」は本当か 〜40歳で和歌山の古民家へ移住した釣り人が考えた、人生の楽しみ方〜といいます。全5話のエッセイです。
- 第一話 イカダの上の、小さな世界 福井の仏谷。父に連れられて乗ったチヌのイカダ釣りの記憶から
- 第二話 ナマーズと呼ばれた頃 バスブーム真っ只中の中学時代。鴨川と琵琶湖と、変なあだ名の話
- 第三話 教わる側から、教える側へ 大学時代。釣りを人に教えるほうにまわって気づいたこと
- 第四話 海に向かって、何も考えない 大学院で心が壊れて、紀伊半島をぐるぐる回っていた数ヶ月のこと
- 第五話 永遠に幸せでいたいなら 和歌山に移住してからの、正直な話
釣りの本ではありますが、ハウツーは一行も入っていません。タックルの解説もないし、何センチ釣ったという自慢もありません。釣りという一つの遊びが、40年かけて一人の人間の生活をどこまで動かしたか、という話です。
なぜ書いたのか
正直に言うと、最初は「あの言葉、本当かな」という軽い思いつきでした。
ただ、子どもの頃から順番に思い出していくうちに、だんだん様子が変わってきたんです。釣りが自分に何をくれたのかを、時期ごとに一つずつ数えていく作業になっていきました。
子どもの頃は「旅」をくれました。中学では「友達」と、しょうもないあだ名をくれました。大学では「人に渡せるもの」をくれました。そして大学院で全部が止まったときには、「戻る場所」をくれました。
並べてみて、自分でもちょっと驚きました。そもそも父の趣味が釣りとパチンコの二つしかなくて、子どもをパチンコ屋には連れて行けない。それだけの理由で、行き先が海になった。その偶然ひとつが、40年かけて、自分が今立っている地面まで決めてしまったわけです。
いちばん何もしていなかった時期に、いちばんのイカを釣った話
本文から少しだけ引用します。第四話、大学院を辞めて、2ヶ月ほど家から出られなくなったあと、車で紀伊半島を回っていた頃の話です。エギングをやる方には、たぶんいちばん刺さるところだと思います。
毎日、釣りをしていたわけではない。
竿を出さない日もあった。
ただ海を見ているだけの日も、車の中で寝ているだけの日もあった。
その時にしたいことだけを、していた。できるだけ、何も考えないようにしていた。
考えはじめると、ろくなことにならないと分かっていたから。
だから、家にいなかった。
家にいると、どうしても考えてしまう。
海のそばにいると、考えないでいられた。
あの頃は、紀伊半島の南に黒潮が近くまで寄っていました。串本のほうへ下ると、冬から春にかけて「レッドモンスター」と呼ばれる、とんでもない大きさのアオリイカが、ちょこちょこ上がる時期があったんです。
じつは僕が今までに釣ったいちばん大きなアオリイカも、この時に釣ったものだ。4キロ近くあった。
人生でいちばん何もしていなかった時期に、人生でいちばんのイカを釣っている。
この2行を書いたとき、自分で書いておいて、しばらく手が止まりました。いまだに、これをどう受け止めたらいいのか分かっていません。人生が完全に止まっていた時期に、釣りだけが動いていた。しかも過去最高の一杯を釣っている。
ちなみにこのイカ、狙って通い詰めて釣ったものではありません。たまたま夕方に磯へ降りて、たまたま来て、11時ごろには上がっていました。そういうものだよなあ、と思います。
海が徒歩5分の家に住んだら、毎日釣りに行くのか
もう一つ、第五話から引用します。移住を考えたことのある方には、こっちのほうが刺さるかもしれません。
家は、歩いてでも釣りに行けるくらい、海の近くに買った。
だから移住する前、僕はきっと、毎日のように釣りに行くのだろうと思っていた。ところが——実際に住んでみると、意外にも、週に2、3回、行くかどうか、というくらいなのだ。
これ、本当にそうなんです。ちょっと風が吹いていたら行かない。なんとなく眠いなと思ったら、二度寝します。
理由は本の中でちゃんと考えていますが、一つだけ書いておくと、「近すぎる」んですね。大阪にいた頃は1時間半かけて通っていました。前の日から準備をして、暗いうちに家を出る。あれは一回一回が小さな旅でした。今は思い立って5分で海に着く。その分だけ、釣りが旅ではなくなってしまった。
第五話では、そのほかにも収入が落ちること、同年代が少ないこと、いつか車を運転できなくなったらどうなるのか——といったことまで、格好つけずに書いています。最近、京都か大阪に戻ろうかと考えることがある、というところまで正直に書きました。
移住をすすめる本でも、やめとけという本でもありません。合う人と合わない人がいるだけの話で、やってみないと分からない種類のことだと思っています。少なくとも今のボクは、移住してよかったと思っています。
で、あの言葉は本当だったのか
結論は本の最後に書いてあるので、ここでは一行だけ。
「永遠に幸せでいたいなら」というのは、ずっと笑っていられる、という意味ではないのだと思う。
——何があっても、戻ってこられる場所を、一つ持っておきなさい。
40年かけて、ボクが行き着いたのはこのあたりです。劇的な幸せではありません。でも、生活の中にいつでも逃げ込める海がある、というのは、やっぱり幸せなことなんじゃないかと思っています。
こんな人に読んでほしい
- 釣りが好きだけど、なぜ好きなのか自分でもよく分かっていない人。ボクもそうでした。書いてみてやっと少し分かりました
- 釣りのために移住を考えている人。いいことばかりは書いていません。むしろ、そうでないことのほうを丁寧に書きました
- 仕事や生活がしんどくて、なんとなく海に行っている人。第四話は、そういう時期のことだけを書いた話です
- 釣りをしない家族に、なぜ釣りに行くのかを説明できずにいる人。この本を渡すと、たぶん少し伝わります
逆に、釣果を上げるための情報を求めている方には、たぶん向きません。そういう記事はブログのほうにたくさんあるので、そちらを読んでいただければと思います。
最後に
Kindleで出しています。写真も何枚か入れました。若狭湾のイカダ、電車から見た琵琶湖、焚き火。文章と一緒に見てもらえると嬉しいです。
「永遠に幸せでいたいなら、釣りを覚えなさい」は本当か(Amazon)
あと、英語版も出しました。翻訳ではなく、英語のエッセイとして全面的に書き直したものです。日本の田舎で釣りをして暮らすというのが、外から見てどう映るのか。自分でもちょっと興味があって作りました。If You Want to Be Happy Forever, Learn to Fish というタイトルです。
ブログが止まっているあいだ、こんなことをしていました。次からはまた、いつもどおり和歌山の海の話に戻ります。よろしくお願いします。

